特集 今年当園が、訪問型一時保育サービスを開始した処、その利用申込みのほとんどは在園児の病児及び病後児でした。ある程度は予測していましたが、ここまで潜在ニーズがあったとは、いささか驚いています。いま病後児保育は、子育てを支援する保育機能の核として推進されています。 特にこの事業は、待機児解消や延長、休日など就労条件との整合化機能とは異なり、現に在園中の働く家庭を重層的に支援するのが特徴です。いいかえれば、従来の行政体質にない、純粋に働く家庭の育児条件を支える内実への取り組みとなる画期的制度です。 病児保育史を辿ると、既に1960年代に東京のナオミ保育園や枚方の香里保育所が父母達の切実な要求を背景に、共同事業として病児保育室を開拓しています。しかしそれが公的保育制度に広がるには、まだ多くの時を要し、平成6年のエンゼルプラン以後、しかも保育園機能として許されたのは第二次エンゼルプランですから、つい昨年のことです。 ちなみに当園は平成7年当時、駅北口の再開発事業で駅型福祉センター構想を市と協議した際、病後児保育の設置を計画しましたが、神奈川県が検討中ということで認めてもらえず、また園内自主事業では、物理的な余裕がとれずに断念した経過があります。 いま、ひとたびインフルエンザ等が流行ると、朝の電話口は「これ以上休んだら解雇される」という切羽詰まった声の背後に子どもの泣き声が聞こえ、親の立場が痛いほど分かります。かつての祖父母同居の家庭ならともかく、父母双方が就労する核家族が普通になり、子ども達もひ弱な体質が増えたのか、年に7〜8回位は風邪をひくと言われています。 もちろん病気最盛期の幼い子どもは、生理的、心理的に全面受容する親の保護を求め、それに応えることが大切です。しかし治療は終えても、集団保育が適切でない状態、怪我や骨折の場合、そして感染症の予後など、その単相化した育児関係や親の欠勤ストレスを考慮すれば、密室化した親子関係が必ずしも適切な状態とは言えません。 そこに専門性を有する病後児保育が期待されるのですが、その性質上、常に一定利用が保障されないので、運営コスト面から保育機能として成立しにくい条件にあります。そこで今回は、厚生労働省の病後児保育の担当官にお願いし、次のコメントを寄せていただきました。
いま相模原市は、新年度のモデル事業として、病後児保育制度を予算化し医師会と協議に入っています。それによると事業委託する保育園から、少し離れた利便性の高いビル内一室を借り受け、複数園が共同利用するセンター方式を目指しています。この点、先行する病後児保育所が、いずれも園内の機能と位置付けている点を考慮すれば、特に「相模原方式」として注目することができるでしょう。そのため、定員規模も通常2〜4名のところ、8〜10名程度に拡大し、利用者が少ない時は、派遣型サービスも検討中です。 その担当する職員ですが、保育士、看護婦のほかに、病理食を担当する管理栄養士の配置が期待されますが、分園制度と同様に委託を受けた園から食事を運ぶことになります。なお施設の隔離室が必要です。それゆえ、本事業は多数の利用者の共有財産として定着すれば子育てを支援する地域保育ステーションとして、その存在意義が高く評価されるでしょう。そのためには、柔軟な発想転換が必要ですが、そのいくつかを次の通り提案いたします。 第一に、乳児から小学校低学年児までなら誰もが利用できるよう登録料は無料にすべきですが、利用料もまた事務費程度に低く抑える必要があります。何故なら、一時保育や休日保育と異なり、在園児は既に市が定める保育料を納入しているからです。実施主体の市町村には新たなコストがかかりますが、新たに負担を求められる家庭が利用を控えたり、敢えて在籍する保育園に病後児を預けることも危惧され、その結果病後児保育室より通常保育園の方に体調の悪い子どもが登園するような異常事態も予測されるからです。 第二に、かかりつけ医の連絡票利用には、健康保険の適用など何らかの基準が必要です。先行する全国各地の自治体でも、ルールが統一されていないこともあって、医療機関によってはスムーズにいかない場合が出ています。特に病後児保育の推進には、この連絡票の活用にかかっているといっても過言ではありません。 そして第三ですが、本来看護婦は医師の指示により、医療行為を補佐する役割で、乳幼児の発達を保障する専門性は求められていません。例えば乳児保育には保育士、または看護婦とありますが、保育計画や指導計画を立てる際に発達を押さえた専門性が要求されますので、その力を発揮するには不十分です。 いま子育て支援を視野に入れた保育士制度の見直しが議論されていますが、二年間の保育臨床の上に看護学を乗せた「保育看護士」とすれば、保育と看護を両立する高度な専門性が期待できるはずです。例えば「保育福祉士」「保育心理士」等とともに、保育看護士職として機能すれば、病後児保育の主力人材として最適でしょうね。
|