アメリカの子育て事情(3

 ボブは小学一年生。ロスアンゼルス郊外に住む、中流家庭の子どもである。去年の9月、新入生になって間もなく、ボブのことが好きだという女の子が現れた。リサというクラスメートの一人で、マン丸の大きな目、金髪のおかっぱ娘である。

 ボブのどこがどう気にいったのかリサの熱は上がる一方で、休み時間や放課後にはストーカーよろしくボブの後をつけまわる。6才の男の子には、これは迷惑のようで、彼はリサに見つからないよう木の陰に隠れたり、全速力で運動場を逃げ回ったりした。

 去年のクリスマス休暇の前日、放課後迎えに行ったボブの母親の前で、照れることなく「あなたは何時も私の心の中、私もあなたの心の中にいるのよ!」とボブの手を握りながら言った。ボブはその意味がさっぱり分からなかったが、彼の母親はびっくりしてボブの担任に相談を持ちかけた。

 その次はバレンタインの日のこと。この日のクラスメート全員がカードをそれぞれに渡すのが決まりだが、中でもひときわ大きいカードをボブは貰った。そこには間違いの多いスペルで「私はあなた愛しているわ。でもあなたが理解できないの」とあった。何日か後、リサはベンに心変わりした。

 誰もがこの少女の愛のボキャブラリーに驚き、首を傾けるかもしれないが、リサの回りの大人達は、みんなこんな話ばかりしていたことが、担任の聞き込みでわかった。アメリカでは、特に子どもが起きている時間帯のドラマの映像や台詞のTVコードが、日本人にとって異常と思えるくらい、厳しい制約がある。

− FROM 福桝 利郎 (医学博士)−

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